減価償却費 - 個人事業主と会社での取扱いの違い

減価償却

事業を行う上で必要となる自動車や機械装置などの固定資産を取得した場合、これらの費用化は「減価償却」という方法で行われます。 主に定額法(毎期一定の額を費用化する)または定率法(毎期一定の率を未償却残高に乗じて費用化する)のどちらかの方法が適用され、その期の費用として計上する額が算出されます。 定額法に比べ定率法の方が早期により多くの償却費を計上できるので、経常的に利益が出ている場合は、定率法の方が課税を先送りできる分だけ有利であると言えます。

この減価償却費の計算の仕方については、個人事業主が申告納付する所得税と、会社が申告納付する法人税とで大きく異なることはないのですが、①原則的な償却方法、計上が強制か任意か、という点で違いがあります。特に個人事業主が法人化する場合(いわゆる「法人成り」のケース)に混乱が生じやすい部分でもありますので、お気を付けください。

①原則的償却方法の違い

所得税計算において減価償却費は、原則として全ての資産につき定額法で償却を行います(法定償却方法)。ただ、機械装置、車両運搬具、工具器具備品につきましては、定率法での償却も認められています。 これらの資産につき定率法を選択したい場合、新規の場合はその年分の確定申告期限までに届出書を、変更の場合は変更しようとする年の3月15日までに変更承認申請書を、それぞれ提出する必要があります。

一方、法人税計算においては、機械装置、車両運搬具、工具器具備品の法定償却方法が定率法とされています。したがって、これらの資産につき定額法を選択したい場合は、新規の場合は法人税の確定申告書の提出期限(原則として決算日の2ヶ月後)までに選定の届出書を、変更の場合は新たな償却方法を採用する事業年度開始の日の前日までに変更承認申請書を、それぞれ提出する必要があります。 なお、建物、建物附属設備、構築物につきましては、所得税の場合と同様に償却方法は定額法に限られます

これらをまとめますと、次の表に示すとおりとなります。


  所得税 法人税
原則(法定) 選択可能 原則(法定) 選択可能
建物 定額法 なし 定額法 なし
建物附属設備
構築物
機械装置 定率法 定率法 定額法
車両運搬具
工具器具備品
ソフトウェア なし 定額法 なし


②償却費計上の任意性

所得税法では減価償却費の計算について次のように定められています。


「(償却費として必要経費に算入する金額は)その者が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額とする。」(所得税法49条①)

すなわち、定額法なり定率法なり、選択したないし定められた方法により計算した金額を計上しなさい、と償却費の計上が言わば強制されています。すなわち、その年の償却費として算出される金額はその年の経費とする必要があり、先送りなどは認められていないということになります。資産の経年劣化や減耗を考えると当然の費用化の認識と言えます。

一方で、法人税法では減価償却費計算につき次のように定められています。


「(償却費として損金の額に算入する金額は)その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち、・・・政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額に達するまでの金額とする。」(法人税法31条①)

この条文の中で、「償却費として損金経理をした金額のうち」と限定されていることがポイントで、法人税においては定額法ないし定率法で計算される金額の計上が強制されている訳ではなく、この金額はいわば枠(上限)を決めるもので、この枠内で会社の帳簿上償却費として認識した分だけを損金として認めます、という仕組みになっています。言い換えると、償却費の理論値を上限として、償却費を計上するしない(その期の損金とする金額)が会社の判断に委ねられているということになります。

法人税の償却費計上の任意性は、青色欠損金の繰越しとの関連で会社にメリットをもたらします。すなわち、法人税では欠損金(赤字部分)を将来に繰り越すことができますが、その上限は10年と決められています。利益の出ない最初のうちに減価償却費を計上して損金としても、繰越欠損金に含まれるだけで、仮に10年これが充当されるほどの利益が出なければ、せっかくの費用が無駄になってしまいます。 そこでこのリスクを避けるために、十分な利益が確保できるまであえて帳簿上償却費を計上せず、損金として認識しないという方法が採られるという訳です。 かつて青色欠損金の繰越期間が5年であった頃に比べ、その効果は薄らぎましたが、法人税の発生を会社が管理し得る手段として実務では用いられています。

ただし、この減価償却費をあえて損金としない手法につきお気を付けいただきたいことは、これに基づく決算書が会社の実情を示さないことになるため、銀行等で融資を受ける際に不利益となるという点です。言わば固定資産が減耗する分を費用化しているものなので、会社の業績を正しく示すためには減価償却費の認識は本来毎期適切に行われるべきであり、これを経営者が意図的に止めるということは決算書の信用性を失い、融資のための審査等にも影響が生じます。節税のためという観点で行ったとしても、決算書の読み手としては「赤字幅を小さく見せようとした」ともとられかねません。

法人税上のメリットであっても、会社経営の他の側面でマイナスとなる要素にもなり得るものですので、減価償却費の取り扱いには十分ご注意ください。

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