有限責任事業組合(LLP)の組成

相談者・相談の経緯

株式会社2社が共同で事業を行うにあたり、LLPを活用したいとのご依頼がありました。

有限責任事業組合(LLP)のメリット・デメリット

有限責任事業組合(LLP)とは、「有限責任事業組合契約に関する法律」に基づいて作られる組合で、民法上の組合の特例と位置付けられます。

組合員全員がそれぞれの個性・能力を活かしながら、共通の目的のため主体的に組合事業に参画します。業務執行の決定は、原則、組合員全員の同意で行い、全員が業務執行することになります。以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット①

組合員は有限責任であり、出資額の範囲までしか債権者に対して責任を負わない。
(なお、民法の組合では無限責任を負う。)

メリット②

パススルー課税(構成員課税)となり、組合自体には法人税が課せられない。

メリット③

内部自治の原則により、組織運営の方法・ルールを組合契約書にて自由に決めることが出来るので、組合員間の権限や損益の配分等について出資額の比率とは異なる割合にすることが可能。

デメリット①

法人格を持たない。

そのため、各種許認可を取得することが難しく、許認可事業を行う場合は事前確認が必要です。


また、組合財産は、組合員全員の合有財産となるが、不動産の登記名義は、LLPとすることができないので、組合員全員で持分を共有登記し、あわせて共有物分割禁止の登記を行うことになります。

そのため、組合員の加入脱退などの変更があれば、登記変更の必要が生じます。

LLP組成の流れ

【1】「組合契約書」の作成

組合員全員の同意で、以下の項目を決定し、組合契約書に署名または記名押印をします。

⑴ 絶対的記載事項

  • ・事業
  • ・名称
  • ・事務所の所在地
  • ・組合員の氏名又は名称及び住所
  • ・組合契約の効力が発生する年月日
  • ・存続期間
  • ・組合員の出資の目的及びその価額
  • ・事業年度

⑵ 任意的記載事項

  • ・損益の分配、財産の分配に関する定め
  • ・組合員の任意脱退に関する定め
  • ・法定解散事由以外の解散事由 等

【2】各組合員による出資の履行

出資金額は、各組合員1円以上であれば、いくらでもよいです。
金銭出資、現物出資(動産・不動産・有価証券等)が可能ですが、労務出資はできません。

【3】効力発生年月日の到来

組合契約に定めた効力発生年月日の到来により、その契約の効力が生じ組合が成立します。
登記は、LLPの効力要件ではなく、対外的にLLPの内容を公知させるものです。

【4】「組合契約の効力発生」の登記

(添付書類)

  • ・組合契約書
  • ・出資金の払込み証明書類(振込がわかる通帳の写し等を合綴)
  • ・組合員の印鑑証明書
  • ・組合員が法人の場合;組合員の登記事項証明書
  • ・ 〃 取締役会議事録等(職務執行者を決定する)
  • ・ 〃 職務執行者の就任承諾書
  • ・ 〃 職務執行者の印鑑証明書
  • ・委任状
  • ・印鑑届書
  • ・印鑑カード交付申請書

(登録免許税)

60,000円

なお、主な登記事項は以下のとおりです。

  • ・名称
  • ・主たる事務所
  • ・事業目的
  • ・組合員の住所・氏名(職務執行者がある場合は、その住所・氏名)
  • ・存続期間
  • ・解散事由
  • ・効力発生年月日

出資額は登記事項ではないので、登記事項証明書から第三者がLLPの出資金を知ることはできません。

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