会社設立時に商号をつける際の注意点

相談者・相談の経緯

弊所に来所されたA氏は雑貨販売をする会社設立を依頼されましたが、商号に迷っておられました。
私どもは、商号をつける際の注意点を説明しました。

商号とは

会社の商号は税務申告、契約などで当事者の名称として使用されることになります。

ちなみに飲食店など店舗のビジネスにおいては、商号とは別に店名を付けることが多くあります。
この場合の店名は商号に対して「あだ名」のようなもので、法律上の名称は商号となります。

以下が商号をつける際のルールになります。

① 使用できる文字

「ひらがな」「漢字」「カタカナ」「ローマ字(大文字、小文字)」「算用数字」と符号(「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点))が使用可能です。

※ 符号は、字句(日本文字を含む。)を区切るに限り用いることができます。ただし、「.」(ピリオド)については、省略を表すものとして商号の末尾に用いることも可能です。
※ ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、当該単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることもできます。

また、「AWC東海株式会社」や「東海XYZ株式会社」「11111株式会社」のように,日本文字とローマ字、数字とを組合せた商号でも登記することができます。
しかし、英文の商号と日本文字による商号とを併記して登記することはできません。(例「AWC Creative Co.ltd. エイダブリュシークリエイティブ株式会社」)

現在、登記上。漢字の商号についても振り仮名を付しておらず、ローマ字の読みを括弧書きで登記することはできません。(例「ABC(エイビーシー)株式会社」)

※ 登記申請書にフリガナを記載しますが、これは令和1年6月現在、国税庁法人番号公表サイトを通じてのみ公表され登記事項証明書には記載されません。
※ 外国会社については、税務署に提出した届出書等に記載したフリガナが公表されます。

② 会社の種類を表す文字を商号に入れる

法令により商号中に使用が義務付けられている文字、例えば、会社の場合は会社の種類に従い株式会社、合同会社等の文字を用いなければなりません(会社法第6条第2項)。
よって「株式会社」を「K.K.」、「Company Incorporated」、「Co.,Inc.」、「Co.,Ltd.」に代えて登記することはできません。

また、「事業本部」とか「支店」など、会社の一部と誤認されるものは不可です。

③ 同一住所に同一、または類似商号がないかチェックする。

同一の住所では、同一、または類似の商号は会社法で認められていません。
ビルに入居する場合、事前に確認しておく必要があります。

しかし、全く同じ場所に本店を持つ、全く同じ商号がなければよいので、基本的には登記自体は同一本店・同一商号でなければできてしまいますが、登記は出来るからといって、全く自由なわけではありません。

法律には、商号の「登記の有無にかかわらず」「不正の目的を持って」「他の商人(会社)と誤認されるおそれのある」商号を使うことが禁じられており、違反すれば侵害の停止、予防を請求されることがあります(会社法第8条第1項、商法第12条第1項、不正競争防止法第3条)。
また商号を故意または過失により侵害した者に対しては、損害賠償請求を請求されることがあります(不正競争防止法第4条)。

よって、社会的認知度の高い「商号」「ブランド名」「店名」などに似ていないか、近隣の同業種で、同一のまたは似た名前の「商号」「店名」「商品名」などはないかを事前に調査する必要があります。

④ ドメイン名も検討する

ドメイン名というのは、WebサイトURLやメールアドレスの○○○.co.jpや○○.comなどです。

最近は、ビジネスでネットを利用することが多いです。
なぜWebサイトのドメイン名を商号と同時に検討するのかというと、先に登録されているドメイン名は使用することができないためです。

ドメイン名は、名刺やパンフレットなどにWebサイトURLやメールアドレスを載せることも多く、一度決めてしまうと変更しづらいので、ネットを利用するのであれば、事前に検討すべきです。

以上の注意点を踏まえ、A氏は商号を決めました。

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