支店の所在地における登記の廃止
支店の所在地における登記の廃止
こちらの記事は2022年9月1日施行の法改正について、2022年07月20日までの情報を元に作成しています。執筆時点以降の事情変更により記事の内容が正確でなくなる可能性がございます。 引用しているウェブサイトについても同様にご注意ください。
2022年9月1日施行の商業登記法改正により、会社の支店の所在地における登記に関する規定(会社法第930条〜第932条)が削除されます(改正法附則§1但書)。
したがって、この改正の施行日以後は、会社の支店の所在地において支店の登記を行う必要がなくなります。
言い換えると、この改正の施行日以後は、支店を設置、変更又は廃止した場合、本店所在地における登記において「支店の所在場所」を登記すればよいことになります。
改正前までの登記は
改正の施行日までは、本店所在地において支店設置の登記をすると、支店所在地に支店の登記簿がない場合は、別途支店の登記簿を作る必要があります。
さらには、本店の登記事項につき、「商号」「本店移転」に変更が生じた場合は、本店所在地において変更登記することはもちろん、支店所在地の支店の登記にも変更登記申請する必要がありました。
しかし、改正の施行日後は、支店所在地における支店の登記がなくなり、別途支店所在地の支店の登記を申請する必要がなくなるので、支店登記は本店所在地の登記で管理されることになります。
改正の背景
支店の登記は、元々は会社等の本店の登記簿を探すためのものでしかありません。
当該改正は、インターネットが普及し、登記簿とは別に、自宅や職場において登記情報の取得が可能となり、会社などの本店の所在場所等を容易に検索できるようになりました。
そのため、支店の所在地における支店の登記について登記簿を取得されることがなくなっていることが背景としてあります。
支店の設置するには
支店を設置するためには、株式会社の場合は取締役会の承認(取締役会の設置がない場合は取締役の過半数の承認)が必要です(会社法第362条第4項第4号)。
支店を登記するのであれば、その承認後に、本店の所在地で登記を行い、改正施行日までは支店の所在地で登記をします。
登記する支店
支店が、本店の管理下で営業する一拠点であれば、支店を登記する必要性は少ないと考えられます。
各会社ごとに支店の意味合いや与えられる権限は異なりますが、一般的には、支店とは、本店から離れて独自に営業活動を行うことができる組織のことです。
支店の支配人
会社は、支店に支配人を置くことが可能です。
支店において支配人を選任や解任などした場合、登記する必要があります。
会社法上、登記していない営業所について、「支店」という名称を用いること自体は、禁止されていないので営業所に「支店」という名称をつけたとしても、登記をする必要はありません。
もっとも、その営業所に支配人を置きたい場合、支店の登記をする必要があります。
逆に会社法上、支店を出したらその支店に支配人を置かなければならないという義務もありません。
支店に支配人を置くことで、支店は、本店から離れて独自に営業活動を行うことができる組織により近くなります。
なお、「支配人」は、会社法上の地位であるのに対し、「支店長」は一般的に支店の長という名称です。
会社法上の支配人とは、「会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者」をいいます(会社法第11条第1項)。
支配人は権限が大きいので選任には慎重な判断が必要です。
さいごに
支店と支店の支配人の登記をすることにより、地域の実情に合わせた柔軟な意思決定を早期に行うことができるようになったり、支店において金融機関から融資を受けることができるようになったり、自治体により支店が公共事業の入札に参加できるようになったり、支店・支店の支配人を登記することには良い面もあります。
ただ、登記の有無にかかわらず、支店の設置により、労働保険・雇用保険・社会保険を支店で別にしなければならないことがあり得たり、税金面で、法人住民税の均等割や所得割が課税されたり、法人住民税以外にも課税されたりすることがあり得ます。
支店の設置には多方面にわたる慎重な判断が必要でしょう。
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